2026.7.1

生成AIやテクノロジーの力をもっと水産業へ。石巻の漁業団体フィッシャーマン・ジャパンから、水産DX新会社「フィッシャーマン・テック」が誕生。

これまで様々な領域から水産業に変革を起こしてきたフィッシャーマン・ジャパン(以下、FJ)が、水産事業者に特化したDX経営コンサルティングおよびAIツールの開発・提供を行う新会社「株式会社フィッシャーマン・テック」を、2026年7月1日(水)に宮城県石巻市に設立します。 これまでFJが培ってきた現場とのネットワークを活かし、「変わりたくてもリソースがない」と悩む水産加工会社等に伴走。テクノロジーの力で業界共通の課題を解決し、日本の水産業を「新3K(かっこよくて、稼げて、革新的)」な産業へとアップデートします。

宮城県の水産業と全国の現状

宮城県は漁業・養殖生産量で全国第3位を誇る水産県ですが、震災以降の人口流出による担い手不足や、近年の環境変化による既存取り扱い魚種の水揚げ高減少など、課題が山積しています。


これは全国的な問題でもあり、全国に約6,000箇所ある水産加工工場の大半が小規模でDXへの対応が遅れています。データを見ると、全国の水産加工業者の46.5%が赤字経営に陥っており、実に64.5%の事業所が「売上・利益率の低下」を経営課題として挙げています(※)。

魚食を支え、地域の水産業を根底で支える水産加工会社が静かに沈みかけている現状に対し、もはや個社単独の努力だけでは解決できないフェーズに突入しています。

※出典:令和3年度 農林水産省「水産加工業経営実態調査」


多角的かつ根本的な課題解決のために、テクノロジーに特化した事業を

FJは2014年の設立以来、水産業のネガティブなイメージを「新3K(かっこよくて、稼げて、革新的)」にするために活動してきました。
これまでに「TRITON PROJECT」を通じた担い手育成や人材マッチング、グループ会社「フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング」を通じた商品開発や販路開拓に取り組んできました。
さらに、水産業にデザインやクリエイティビティの力で新たな価値を生み出す合同会社「さかなデザイン」を立ち上げたほか、水産業の現場と研究者を繋ぎ、科学的根拠に基づいた課題解決を目指す「フィッシャーマン・ジャパン研究所」を設立するなど、多角的な視点から業界の課題にアプローチし続けています。


しかし、私たちが現場で活動する中で直面したのは、水産流通の要である「水産加工会社」が抱える構造的な課題でした。
漁師が獲った魚を大量に処理し、加工して賞味期限を延ばし、全国の販路へと届ける水産加工会社は、地域水産業の根幹を担っています。しかしその現場では、属人的な業務が多く残り、多くの企業が「変わりたくても、日々の業務に追われて時間的・人的リソースがない」という共通の悩みを抱えていました。


そこでFJは、各社が抱える共通課題を共同化し、業界全体で使える仕組みへと昇華させる必要があると判断しました。2025年6月からは「宮城県中小企業等共同化チャレンジ事業」を活用し、県内の水産加工会社4社(センシン食品(名取市)、ハチヨウ(気仙沼市)、布施商店(石巻市)、マルカ高橋水産(石巻市)と連携したプロジェクトをスタート。月に一度集まって知見を共有しながら、仕入れ判断や製造管理、シフト調整などの現場課題に生成AIを実装してきました。結果として、過去の相場情報の検索時間を10分から、わずか10秒に短縮するなど、明確な成果を生み出しています。一社単独ではコストも時間もかかりすぎるDX導入も、複数社で協力し合うことで、解決のスピードを圧倒的に早められることを実証したのです。

水産加工会社による生成AI活用事例の成果報告会での様子



この実証で得た手応えをさらに加速させ、より複雑な経営課題の解決や業界全体のデータ基盤構築を実現するためには、一般社団法人の枠組みを超えた機動的な資金調達と専門人材(ITコンサルタントやエンジニア)の採用が不可欠です。
そのため、新たにテクノロジー特化型の「株式会社フィッシャーマン・テック」を独立法人として立ち上げ、水産事業者の伴走者として本格的な事業展開へと踏み出します。

現場の課題に寄り添う水産特化の事業展開

株式会社フィッシャーマン・テックは、水産加工会社や漁協などの現場に深く寄り添い、以下を主軸とした事業を展開します。


① 水産事業者向けIT・DX経営コンサルティング
経営者や現場スタッフの声を直接聞きながら「どこにAI活用可能な課題があるのか」を抽出し、企業ごとの最適な改善策を提案します。システムを納品して終わりではなく、月次でデータに基づく経営の可視化や意思決定支援を一気通貫でサポートし、利益率の改善に直結させます。これまで約20社の事業者を支援してきた実績があり、今後も地域に根ざした持続可能な伴走支援を拡大していきます。


② AIツールの共同開発・SaaS提供
複数社を支援する中で見えてきた「共通の悩み」を抽出し、受発注・在庫管理・製造管理などの機能を備えた水産事業者向けのSaaSプロダクトや、現場で使える実用的なカスタムAIツール(例:営業支援AI botなど)を共同開発・実装します。システム導入・更新に多額の費用がかかる従来の仕組みを見直し、必要な機能だけ部分的に安価に導入できるシステムを提供します。


③ 自治体・公的機関プロジェクト
全国の水産地域のDX計画実現に寄与する自治体・公的機関との連携事業を推進します。各地の水産ITベンチャーとも連携し、水産加工会社だけでなく、より上流工程である魚市場や漁協に向けたソリューションも提供します。
例えば、令和7年度の三重県南伊勢町「デジタル水産業戦略拠点事業」では、魚市場DXの検討メンバーとして参画しています。水揚げされた魚の計量データをクラウドに上げ、仲買人や加工会社が電子入札できる仕組みの導入を進めています。このように、市場や漁協といった上流のデータを加工会社の仕入れデータと電子的に連携させることで、提供できるソリューションの幅を広げ、地域全体の水産サプライチェーンの最適化を推進します。


■石巻から日本中の海へ
まずは参加企業への生成AI導入によって、定型業務の時間短縮などの業務効率化(短期目標)を確実に進めます。その手応えをもとに、中期的な目標として「宮城県の水産業界における生成AI活用モデルの確立」を目指します。そして最終的には、この石巻で生まれた水産特化のDX基盤を全国の水産業界へと展開し、日本中の海の産業を持続可能なものへと変革していきます。

代表プロフィールおよびコメント


■株式会社フィッシャーマン・テック 代表取締役 磯部 高弥(いそべ たかや)
大阪府出身。大阪大学卒業後、フィッシャーマン・ジャパンのインターンで石巻の水産業に飛び込み、現場で出会った水産プレーヤーたちの魅力を知る。同時に、日本の食を支える産業の重要性と現場が抱える課題にも気づき、ITで何か力になれるかもしれないと考えるようになる。一度ITコンサル会社へ入社し、システム開発のプロジェクトに従事。その後フィッシャーマン・ジャパンへ戻り、水産業特化のITコンサルティング事業を立ち上げ。現場の中に入り込み、事業者と一緒に業務フローを改善していくことに手応えを積み重ね、2026年、株式会社フィッシャーマン・テックを設立。

【コメント】
私が水産業の未来へ飛び込んだ原点は、学生時代のインターンで直面したある出来事でした。販路を持たない若手漁師の牡蠣を、地元の水産加工会社に持ち込んで商品開発を依頼した際、『加工会社が間に入り、大量にさばいて賞味期限を延ばし、全国の販路へと届けてくれるからこそ、漁師は生産に集中でき、私たちは美味しい水産物を当たり前に食べられるのだ』と、その存在意義の大きさに衝撃を受けました。

同時に、石巻には先の見えない環境の中でも未来を見据えて挑む、魅力的で熱い経営者たちがたくさんいました。しかし、現場の多くが外部環境の変化に直面しながらも『時間がない、お金がない、リソースがないから変えられない』という状況にあります。
私たちはこの状況をテクノロジーで解決したいと思っています。

私の中で一番高い目標は、フィッシャーマン・ジャパンも掲げる水産業を「新3K(かっこよくて、稼げて、革新的)」な産業にすることです。私たちが支援に入った企業が、革新的なアプローチで稼げる状態を作ること。その実現のために、現場に深く寄り添う伴走者として、共に新たな勝ち筋を証明し続けます。

左から、取締役 多賀世納、代表取締役 磯部高弥、取締役 長谷川琢也


会社概要
会社名:株式会社フィッシャーマン・テック
設立日:2026年7月1日
所在地:〒986-0827 宮城県石巻市千石町8−20
事業内容:DXコンサルティング、システム受託開発・導入支援、SaaSプロダクト提供
資本金:450万円
コーポレートサイトURL :https://fishermantech.jp

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